ZCの小箱
□C追えば逃げるの法則
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まさかのザックス「寝ちゃった」発言にはカンセルもたまげた。
だ、だって……鉄の処女、アイアンメイデンとも言われてるあのクラウドだ。
カンセルのリサーチによれば、クラウドはあの美貌からかなりの男に言い寄られており、相当用心深くなってるということだ。
ド田舎出身で都会慣れしてないこともあって人見知りも強く、人間関係も極めて狭い。
そんなクラウドを、会って2回目かそこらで陥落できるんだろうか?
もしや…、カンセルの背中をイヤな汗がつたった。
ザックス、クラウドをレイプしちゃったんじゃないだろうか?
しかし、それもザックスの人となりを良く知ってるカンセルとしては解せない話だった。
確かにザックスはタラシとして有名だし、今まで狙った女の子でモノにしてない子はいないといっていいくらいのフェロモン全開男だ。
でも、無理強いやレイプまがいのことはした事がない。
嫌がるクラウドを無理やり、なんて親友のカンセルとしては信じられない。
大体、もし手篭めにしたんだったら、こんな満足した犬みたいなバカっ面をさらして朦朧と歩いてるだろうか?
謎は深まるばかりだ。
*
「なあ、ザックス、クラウドと寝ちゃった、ってそれ夢か幻覚じゃねえの?」
最近ソルジャー内でもアヤシゲな薬が出回ってて、刺激を求める一部の連中はかなりはまってるということだ。
もしやザックスの「クラウドと寝た」というのは、悲しい願望をかなえようと薬が見せた幻覚なんじゃないだろうか?
ザックスは首を振った。
「それはない。あれは…、現実だ」
そうか〜?なんてカンセルも思わずヒドク疑い深い声をだした。
ザックスは、んじゃ証拠を見せてやる、この辺噛まれたけどまだ傷あるかな、なんていいながらシャツの片袖を脱いで見せた。
ザックスの肩にはよく揃った歯並びのいい歯型がいくつもついていた。いや、歯型だけじゃない、爪あとまで綺麗なみみず腫れになって残っていた。
「な?現実だろう?」
恥ずかしげもなく歯型を見せてから、またザックスはふう〜っと溜め息をついた。
「お前、その溜め息やめろ!キモイ!」
カンセルも混乱してきた。
一体どうなってるんだろう??
クラウドが実はすんげえ男好きだったってか?
いや、それならこの狭い世界で絶対噂になってるはずだ。そういう話はあっという間に広がるから。
じゃあ……本当に2人は互いに一目惚れしてあっと言う間に深い関係になったんだろうか。
どうもそれしか考えられない。
そしてその割にはザックスはうじうじ悩んでる。
カンセルはお手上げとばかりに残りのビールを一気に飲み干すと
「ねえさん、お替り!」と大声で注文した。
しばらく様子見だ。
それはそれで面白いかもしれない、とカンセルは不埒にも考えた。