ZCの小箱

□D援軍登場!
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クラウドたちの巡回が始まる一時間前に、ザックスはカンセルに指定された待ち合わせ場所に急いだ。
カンセルがなるべく目立たない私服と指示してきたので、洗いざらしのTシャツにジーンズという軽装だ。
一応瞳が目立たないようにサングラスもかけた。見た目は繁華街をうろついてるそこらのあんちゃんと言ったところだ。

巡回は午後二時から始まる。
神羅ビルから出発して八番街噴水広場を一周、その後八番街と五番街を回る二ルートに別れる。。
カンセルが先日調べたところによると、インカムの周波数はレベルE〜Aまであり、普段は巡回仲間だけで使用するレベルEで会話をしてる。
これを傍受しつつクラウドが一人のところを狙って捕まえる、という計画らしい。
なんだかんだと言って、計画遂行に燃えてるカンセルに全部まかせっきりだったザックスは、待ち合わせ場所に止まってる目立たない古びたワゴン車の前で立ち止まって辺りをきょろきょろした。

カンセルはどこだろう?

その時、オンボロで錆の浮いた営業車風のその車から声が聞こえた。
「ザックス!ここだ、乗れ!」

オンボロ車の窓がするすると開き、カンセルの顔が見えた。窓ガラスがスモーク仕様で中が見えなかったので、まったく気づかなかった。

ザックスは慌てて、見た目よりずっと重いドアを開けると車の中に滑り込んだ。

中は…、外から見たのとは大違いで意外に広く、何かの器具や器械が所狭しと置かれていた。
「重いドアだな……」ザックスがつぶやくと運転席から聞いたことのある声で返事があった。

「バズーカ砲にも耐える防弾仕様だぞ、と」
やっぱり、この声は。

「よ!ザックス!久しぶりだぞ、と」
運転席から身を乗り出して、ザックスがあまり会いたくない赤毛の男が挨拶してきた。
「レノ……」
「今回の作戦にあたり、タークスが特別に協力してくれることになったんだ」
カンセルは上機嫌でそう言うと、助手席に乗ってるレノの相方にもうなずいてみせた。

「ルードもかよ……タークスがこんな私用に特殊装備の車やら色々使ってもいいのか?」
レノは頭の後ろに手を組むとあくびを一つした。

「タークスは特別権限でね、タークス管理のモノを非番時に使っても何も文句いわれないんだぞ、と」

「カンセル!!タークスまででしゃばってくるなんて大袈裟過ぎ!」

カンセルはザックスの肩をぽんと叩いた。

「いいか、ザックス、オレはいい加減な仕事はしたくないんだ。性分でな。協力するって言ったら徹底的にやりたい」

レノが小型のPCの液晶画面をザックスに指し示した。

「これはこの辺の詳細地図だ。第三小隊第五連隊が巡回に使ってる周波数を元に、連中がどこにいるかわかるんだぞ、と」
「はあ?そこまでやるのか?」
「ったりまえだぞ、と」

レノは一体どこまで知ってるんだろうか?
なんだかやけに楽しそうににやにやしてるので、ザックスはエラク気になった。

「レノ、てめえ、何か下心ねえか?」

レノは振り返ると、目を大きく見開いてまさか、というような顔をした。
芝居がかってる。

「オレはさ、ただ単に友人の目下の困難に協力を申し出てるだけだぞ、と」
嘘だ。さっきから口元から笑いがこぼれてる。
「誰捕まえるか知ってるんだろ?」
「そりゃ〜もちろん!あの麗しのニブルの山百合、クラウドくんだろ?」
ぜってえ事情知ってる!カンセルめ!話したな!
ザックスはむっとしたが、ここまでタークスグッズを使わせてもらうんじゃ文句も言えない。

「レノ、作戦の説明を早く」
ハゲ頭でコワモテのレノの相棒がぼそりとつぶやいた。

「そうそう、クラちゃん登場までもうあまり時間がないぞ、と」
な〜〜にがクラちゃんだよ!ザックスはむっとしたが黙っていた。

んじゃ、カンセル先生、説明よろしく、というと、レノはカンセルに自分の膝に乗せていたパソコンを渡した。

カンセルはこほんと軽く咳払いをすると、ザックスに良く見えるように画面を向けた。

「まずな、あの連中は神羅ビル玄関前に集合してから4人一組でここの噴水広場を一周するんだが、その後二手に分かれる。一組は五番街、もう一組は八番街を回るんだ。クラウドがどっちに行くかこの時点ではわからないから、噴水広場隅のここに待機してどっちに向かうかを確認する。ここまではいいな?」

カンセルはレノのPCのディスプレイ上の地図を指差しながら説明を続けた。

「Aルートの五番街をクラウドがを巡回するとしたら、オレたちは先回りして七丁目のこの辺りに車を置く。必ずここを通るからだ。Bルートの八番街なら三丁目のここで待ち伏せする」

「つまりクラウドの行くルートに合わせて待ち伏せするわけだ」
カンセルはうなずいた。
「連中はインカムで連絡しあってる。周波数はわかってるから、車の中で傍受して連中の計画を知ることができる」

「計画?」

「おいおい、連中が黙ってクラウドをこんな危険な場所に放置すると思うか?絶対用心してるって!その隙をつくんだからこっちはワンランク上の準備をしないとな」

なんだか随分大袈裟になってきた。

「でもクラウドは誰かと組んでるんだろう?どうやって引き離すんだよ……」

「そこは抜かりないぞ、と」レノは振り返るとにんまり笑った。
「こっちにも美女の援軍がいるからな、と」
レノがポケットから煙草を取り出して火をつけようとしたが、ルードに
「この車の中は禁煙だ」と言われて慌てて揉み消した。

「イリーナだ」
ルードがそっけなく言った。
「誰?それ…?」
ザックスの問いにはレノが答えた。

「タークスの新人っつうかまだ研修中の女の子。可愛いぞ、と」

一体どこまで協力を頼んでるんだろう……ザックスは頭が痛くなってきた。

「イリーナには研修の一環として、一般兵の注意をそらすように命じてあるぞ、と」

どうやらクラウドとペアになった方の一般兵を引きとめる役らしい。

「イリーナが二人を引き離すから一人になったところで、ザックス、オマエの登場だぞ、と」

「拉致して来い、とりあえず」
カンセルがきっぱり言った。

「え?拉致?」

「そうだ。この車にクラウドを引っ張り込め」
ルードが言うとちょっと怖い。
「わかった」
ザックスはごくりと唾を飲んだ。

タークスの力まで借りて失敗したら末代までの笑いものだ……

しかしなんて大袈裟なことになったんだろう……
クラウドと二人っきりで話したいだけなのに。

とはいえここまで来たらもう引っ込みはつかない。
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