<セブンス・ヘブン>
セブンス・ヘブンといったら、美味い料理にいい酒、美人でナイスバディの魅力的なママ、エッジ界隈じゃ一番人気の店だ。
「いらっしゃいませ!」ってティファちゃんににっこりされたら、どんな男も天国気分。
でも・・・馴染みの男たちはどんなに酔ってもティファちゃんには絶対ちょっかいは出さない。絶対!!だ。
ジョニーはカフェを早仕舞いするとティファの店に来て、新しく仕入れたという上等のチーズを使ったピザに舌鼓をうっていた。
なんてったって、食材がいい!!
ちょっとこの辺りじゃ手に入らない純正のチーズだ。トッピングのベーコンは明らかに手作りの逸品。
ジョニーはうなった。ちょっとシャクだけどこんなに良いものがエッジで手に入るのはヤツのお陰だ。ジョニーも上物のコーヒー豆を頼んでいる。
店内は混みあっており、ほどよくざわめいてる。
へ!よしよし、皆行儀よく飲んでるゼ!
ジョニーはコレル酒の水割りのお替りを頼み、最後に残ったピザの端っこをつまみにもうちょっと飲むことにした。
「はい、お待たせ!」
ティファちゃんがお替りを持ってきた。
ホント、何時見ても可愛い・・・
灯りにきらめくつややかな黒い髪を後ろでゆるく束ね、シンプルなTシャツに黒無地のエプロン。
「このピザ、うまいなぁ〜!」
ジョニーが褒めると彼女はにっこりし、「ファーム直送のチーズよ。」と答えた。
「ゆっくりしてってね。」小脇にお盆を抱えてカウンターに戻ろうとした彼女に手を伸ばした男がいた。
「おい、ちょっと酌くらいしろや。」
ジョニーはぎょっとして顔をあげた。見たことのない客だ。
周りに座って楽しげにしゃべっていた常連たちが一斉に凍りついたようにその客をみつめた。
「すいません、お客さん。ここではそういうサービスはしないんです。」
お、ティファちゃん、きっぱり言ったよ。ここでひっこめば大丈夫。
この時間はそろそろ・・・ヤツのお帰りだから。
どうか、神様、このバカな客がここでやめてくれますように・・・
「な〜に気取ってるんだよ!酌くらいで。ほら、隣に座れよ。」
「お客さん!!」
あ・・あ・・ティファちゃんの腰抱いたよ!!
ティファちゃんも強いからな、肘撃ち食らわされたらあんなヨッパライ一発だ。
う〜〜ん、でも一応客だからな・・・オレが一言言うかな・・・
その時、ドアのきしむ音がして外の冷たい風がすぅ〜〜っと吹き込んできた。
コツ、コツ、と重いブーツの音が床に響く。
来た!!!来た!!!常連客はみな自分は関係ないという風に顔をそむけた。
オレは見届けてやるぞ。バカな男め。ジョニーはこそっと横目でうかがった。
ティファちゃんは顔をあげるとヤツに微笑んだ。
「悪いな、出ていってもらおうか。」
冷たい声、無表情な端正な顔。
「んだとぉ〜〜、オレは客だぞ〜〜」
ヤツはヨッパライの襟首をつかむと片手で椅子から持ち上げた。
「出てってもらおう。」ヤツは客を椅子から放り出すと静かに言い渡した。
じっとヨッパライの顔をみつめてる。
怖い、オレがアイツだったらちびっちゃうヨ。あの目は本当に怖いんだ。信じられないほど青くて人間離れしてる。
あれが魔光の目っていうやつだ。
ヨッパライはしばらくヤツの顔を見ていたが、ハッとしたようにつぶやいた。
「ソルジャー・・・」
蒼白だ、やっとわかったみたいだな。
「釣りはいらねえや!」そいつは荷物をかつぐとあたふたと出て行った。
あ〜あ、お金放り出してったよ。
「ドアはちゃんと閉めてってね〜!!」ティファちゃんが叫んでる。
「ティファ、お釣りは渡さなくてよかったのか?渡してこようか?」
「ありがとうね、クラウド。でも今クラウドがお釣り持って追いかけたらあの人心臓マヒ起こしちゃうわよ・」
ヤツは不思議そうな顔でティファちゃんを見てる。
まったく変な男だよ・・・
店内はまた元のざわめきを取り戻しつつある。
ヤツは我らの女神ティファちゃんに軽くキスすると(くそ!!)階段を上って行った。
そう、どんなにティファちゃんに憧れても手を出したらダメ。
でもまあ、アイドルってそんなもんだろう?
ここの常連客はいつも背後から見てるあの青い青い目を感じてるんだから。