ああ
□海上散歩
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目の前には青い空。白い雲。
数匹のムックルが気持ち良さそうに飛んでいる。
『あぁ…癒される』
「ちょっと、ちゃんと捕まっててね」
はぁい。とどこか気の抜けた返事を返すと、溜め息が聞こえた。
「溺れても知らないよ」
『その時は助けてよ』
「そうならないように、しっかり捕まっててって言ってるんだよ」
耳の直ぐ横で水の音がする。
顔をそらすとオレンジ色の体が目に入った。
私は今、海上散歩(という名の暇潰し)に来ている。
やり方は簡単。仰向けになって海に浮かび、あとはフローゼルに引っ張ってもらうのだ。
『今日も良い天気だねぇ。洗濯物は早く乾くよ』
「明日から雨が続くらしいよ」
右手だけフローゼルに捕まり、あとは自由に浮かぶ。特に目的地がある訳ではないので、ただひたすら海を泳ぐ。
『そうなの?困るわね』
「僕、雨は嫌い」
『あら、どうして?フローゼルは水タイプじゃない』
「だって雨が降ったら外に遊びに行けないよ」
『それもそうね』
「それに」
『それに?』
いかにもフローゼルらしい言葉に笑いながら続きを促す。
『雨だと、海上散歩。出来ないしね』
「…じゃあ今日は遠くまで行きましょうか」
『遠く?』
「えぇ。ずっと遠く」
そう言った私にフローゼルは少し驚いた顔をして、振り向いた。
『今日は何時もより長く散歩しましょう!』
明日から暫く散歩はお預け。
そのかわり今日は日が暮れるまで散歩タイムにしましょう。
海上散歩日和
(…ねぇフローゼル?)
(何?)
(ここ何処かしら?)
(…分かんない)
散歩タイム延長で調子に乗ったフローゼル。
結局迷子になりました。