ああ

□指輪
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『……あぁぁぁあ!!』










天気は快晴。
直ぐ横を通り過ぎる風は、暑くもなく寒くもなく。つまりは丁度良い温度で。
それに柔らかい光を付けたしたら、誰だって眠くなると思う。
だから、無論、僕も眠くなるわけで。
ふかふかの芝生の上で目を閉じたその時、家の中から悲鳴(まさにこの世の終わりだ。とでも言うような)が聞こえたから、昼寝どころじゃなくなった。



『あぁ!嘘でしょ!どうしよう!』



反射的に飛び起きて、家の中へ入ると、マスターが部屋のあちこちをぐるぐる歩いていた。


「…マスター?なんか凄い悲鳴聞こえたけど」

『!ギャロップ、どうしよう!』

「…どうしたの」

『……なくしたの』

「何を?」

『…あの、指輪』



指輪?…あぁ、あれか。
と小さな袋を思い出す。
マスターが何時も持っている小さい袋。とても大事そうに握っていたから、中身は何か。と聞いたことがある。するとマスターは『大切なひとがくれた大切な指輪』と頬を染めながら話してくれた。その人が誰か。なんて勿論僕は知らない。だけど、それを聞いた時に心が締め付けられる様な気持ちになったのも事実。



「家の中探した?」

『うん。…何処で落としたんだろう』

「……僕、探してくるよ」

『え、』



そう言って僕は、素早く家を出た。
家に無いってことは外で落としたのかもだし。それに何より、マスターのあんな顔見たくなかったから。



「…僕って、ほんと」


はぁ。と深い溜め息を吐く。
もう空は薄く橙色に染まっていて。
群れをなしたムックル達が飛んでいくのが分かる。

道に目線を落としながら、ゆっくり歩いく。原型の姿ならもっと遠くまで行けるけど、今は擬人化中だし、見付からなければいい。なんて思ってたりもする。あぁ、醜いな僕。

結局、指輪は見付からなくて。(そう言えばどんな形かも知らない)もうすっかり日が暮れた頃、家に戻った。









(…ただいま)
(あ、おかえり。ごめんね探させて)
(いや、いいよ。結局無かったし)
(…ギャロップ、実はねあったの。指輪)
(は?)
(ベッドの下に落ちてたみたいで)
(……)





指輪見付かって良かったね。とは言えないけど、やっぱりマスターの笑顔が好きだから。






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