ああ

□贈り物
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それは今から少し昔の話。
当時、まだ幼かった少女は草むらで傷付いた1匹のポニータを見付けました。
少女は弱々しく蹲るポニータを見ると急いでポケモンセンターに運びました。(勿論引きずって)

翌朝、ジョーイさんに呼ばれて顔をあげると(少女は一晩中ポケモンセンターに居ました)そこにはすっかり元気になったポニータが立っていたのです。


―それが、少女とポニータの初めての出会いでした。



『ねぇ、ポニータ』

「何?マスター」


ある夜二人は近くのお祭りに来ていました。
お祭りは混雑していて、気を抜くと迷子になってしまいそう。


『…人、多いねぇ』

「…そうだね」


少女より少しだけ背が高い赤髪の少年は頷くと、せわしなく目を泳がせて、いきなり左手で少女の右手を掴みました。


『?』

「…えぇっと」


繋れた(というより捕まれた)手を見て、少女は首を傾げます。


『ポニータ?』

「その、あっと…………あ!あそこ、行ってみよう!」


少年は、近くの屋台へと少女の手を引っ張って行きました。
……まるで、真っ赤に染まった顔を見られたくない。というように。

少年が連れてきた屋台はどうやらアクセサリーを売っているようです。
可愛いピアスや硝子のネックレス等、所狭しと並べてありました。
しかし、そんな豪華な物の中から少女が目を付けたのは、シンプルな指輪。
模様も無く、ただ赤い宝石が1つ埋め込まれている指輪。


『…これ、綺麗だね』

「…どれ?」

『この指輪』


少年は暫くじっと指輪を見つめていましたが、やがてそれを手に取ると、他の商品を見ている少女を呼び、歩きはじめました。


『今日は楽しかったねぇ、ポニータ』

「……」

『また今度来れたらいいねぇ』

「……」


嬉しそうに喋る少女は、最早繋れた手の事は気にしていない様子。


『さぁ、さっさと家に帰って寝ようね』

「……マ、マスター」

『ん?なぁに』

「…ちょっと、」


突然立ち止まった少年に合わせて、少女も止まります。


「…マスター、明日誕生日でしょ?」

『……あれ、そうだっけ』

「…やっぱり。忘れてると思った」

『…あはは』


苦笑いする少女をよそに、ポケットの中を探る少年。


「で、これ。1日早いけど…」


少年が取り出したのは、さっきの屋台で買ったあの指輪。


『え、これくれるの?』

「…うん」

『……ありがとう。大事にするね!』


少女のその笑顔を見た少年は、安堵の溜め息と共に、また家路への道を歩くのでした。
(勿論、手は繋いだままで)












(おーい、マスター)
(…ん、あぁ)
(こんな所で寝たら風邪ひくよ)
(…夢見てた)
(は?夢?)
(うん。昔の私と、まだギャロップがポニータだった時の夢)





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