ああ

□ふわり、
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『フワさーん』



ある昼下がり。

薄い水色のエプロンを風になびかせた少女が歩いている。



『おーい、フワさーん。お昼ご飯の時間ですよー』


少女はおかしいなぁ。と小さく呟くと、その場で唸りだした。


『何時もならもう帰ってくる時間なんだけどな…何かあったのか、な…?』


と、その時。
いきなり強い風が吹いた。


『う、わわ…』


慌ててバサバサと広がる髪を押さえると、不意に目の前が暗くなった。


『…?』


髪を直しながら上を向くと、そこには紫の球体をフワフワと浮かばせた、


『フワさん!帰ってきたんですね』


フワライドがいた。


『さぁさ、もうお昼なんで早く帰りましょうか』


少女はフワライドに笑顔を向けると、家の方へと歩きだした。


「……マスター」


急に名前を呼ばれ振り向くと、紫色の髪と赤い目をした青年が立っていた。


『何ですか?』


いきなり現れた青年に驚きもせず、慣れた様子で聞き返す少女。


「……今日は海まで行ったんだ」

『あら、海まで?だから今日は何時もより遅かったんですね』

「……ごめん」

『いいえ!それより、海はどんなでした?』


相変わらずニコニコと話す少女とは対照的に、青年は無表情のまま。


「……すごく、キレイだった」

『それは良かった』



今度二人で行きましょうね。と嬉しそうに喋る少女に手を伸ばす。


「……マスターも」

『ん?』

「……マスターも綺麗だ」



少女の茶色の髪に触れて、ぼそりと呟く。

青年の言葉に少女は一瞬驚いた顔をしたが、また『ありがとうございます、フワさん』と微笑んだ。






貴女の髪が、さっき見た海よりも綺麗だった。





(……マスター?)
(…はい?)
(……顔が赤い)
(!…何でもないです)











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天然タラシのフワライドさん。

フワさんって言いたかっただけ。




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