ああ
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『バクフーン!』
「おう!」
威勢の良い返事とともに、バクフーンの口から勢いよく炎が噴射される。
しかし、此処はチャンピオンロード。相手も一筋縄ではいかないようだ。
「イワーク相手の動きを止めろ!」
『バクフーン避けて!』
いかにも硬そうな巨体が地響きをたててバクフーンへと突進してくる。
急いでバクフーンへと指示を出す……のだが。
「受けて立つぜ岩蛇野郎!俺様をナメんなよ」
『ちょ、バクフーン…』
何故かイワークに向かって、かえんほうしゃをしていた。このバクフーン、まだ小さかったヒノアラシの頃から自分勝手で喧嘩上等な性格なのだ。
『…どこで間違えたんだろうか』
「あ?何がだよ」
額に手をあてボソリとつぶやくと、近寄ってきたバクフーンに怪訝な顔をされた。(原因はお前だよ!)
『いや…あれ?試合は?』
「んなもん、とっくに終わった」
『え、嘘』
「今回のヤツもたいしたことなかったな。つまんねぇよ」
バトル後で原型のまま腰に手をあて、唇を尖らせる姿は中々可愛げがある。
『でも、相性悪いんだから少しは考えて攻撃しなきゃ』
「相性なんて一々気にしてられるか」
『…まったく』
(何処から湧いてくるのか知らないが)バクフーンには絶対負けないという自信があるようだ。
だが、長く旅をしていて一敗もしないなんてことは奇跡に近い。実際、ナギサシティではデンジさんのオクタンにギリギリまで追い詰められた。(まさかオクタンでくるとはね)
「あん時は……まぁ、いいだろ結果的には勝ったんだしよ」
『でもさあ……』
チャンピオンロードを抜ければ四天王とチャンピオンが待つチャンピオンリーグがある。
今までは半ば力押しに近い戦い方をしてきた。多分そんな戦い方ではチャンピオンどころか四天王にさえ勝てないだろう。何回も戦ううちにポケモンが深い傷を負うかもしれない。それだけは、なんとしても避けたかった。
『バクフーン本当に分かってるの?』
「わーってるって。要は俺様がボコボコにしてやりゃあいいだろ」
『…全然分かってない』
相変わらず自信に満ちあふれたその顔に笑みを浮かべているバクフーンを、一発殴りたくなった。
もっとも、たいして握力のない私が殴ったところで何も変わらないと思うが。
「早く次行こうぜ、体力が有り余ってしょうがねぇ」
空中に向かって拳を突き出すバクフーンの顔をバシッと両手で挟んだ。
(痛いだのなんだの叫ぶのは無視した)
「な、なんだよ」
『ちゃんと聞いてね』
「お、おう…」
『四天王との戦いは、これまでとは違って凄く大変になると思う』
「だから俺が!」
『黙って聞いて』
またバクフーンのペースに引き込まれる訳にはいかないと、ぐっと両手に力を入れる。余程痛いのか少し涙目になっていた。
『難しい戦いになると思うの。そうしたら今までより怪我も増える』
「…」
『ひとりで突っ走るのもたまには。たまにはよ。いいけど、これからは相手のタイプとかちゃんと考えるようにして』
「…」
『仲間が大怪我するのは嫌なのよ』
分かって。と最後はバクフーンの頭を撫でながら言う。バクフーンはというと、先ほどからずっと黙りこんでいる。
『バクフーン、もう喋っていい…』
「要するにさ!」
『?』
「怪我しないように、相手のこと考えて戦えばいいんだろ?」
『う、うーん…?』
いきなり顔をあげたかと思ったら、これまた微妙なことを言ってきた。
私が応えあぐねていると、ひとり納得した様子のバクフーンが鼻歌を歌いながら歩きだした。
「俺はさ」
『…何?』
「四天王とかいう奴らに負ける気はねぇよ」
『…うん』
「でも、これからはお前がさっきみたいな……その…あんな顔しないように戦うから」
『……』
「んだよ!こっち見んな!」
顔を真っ赤にしてそう告げたバクフーンはチラッとこちらを見たきり、そっぽを向いてしまった。
とりあえず、伝わったのかな。と安心してみる。 相手の心を読むことは出来ないから本当に伝わったかどうかは分からない。でも今は私に見られないように必死になって顔を隠しているバクフーンを笑ってあげた。
分かってよダーリン!
(おっしゃああ!四天王2人目クリアぁあ)
(……本当に分かってるのかなあ)
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