novel(female)

□白百合女学園高等部〜メリーゴーランドでつかまえて〜
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「なんだ、ゴメンナサイの一言でも言ってきたか」
「えーっと、迎えに来てほしいそうです」
「……どこに。あいつらが指定したのは、ここじゃないのか大地。お前間違ったんか」
「Aンバサダーホテルのところまで。なんか、前日から泊ってたみたいですよ」

あーん、と口を開けた榛名を初めて見た、と大地は思う。
すたすたとパスポートを買って、入場する大地を、榛名があわてて追いかけた。

「なんで、中で合流すんだよ、そもそもだったら最初から中で待ち合わせればよかっただろ?!」
「連絡するの、忘れてたんですって、市原さん。もー、そそっかしいんだから、もー、かわいっすね」
「お前! お前はそれでいいかもしんねーけど、俺は全然、そそっかしいんだから(はーと)とか思えない! 思えないったら思えない! てめ、市原殴らせろ、あいつ信じらんねー!」
「市原さん殴ったら、俺が榛名さん殴り返します。…あ、秋丸さんと手をつなごうそうしよう」

市原さーん、と走り出す大地の背中を追う。必死で。なんだ、あいつ。あんなに足早かったか、と、一応早い榛名はぜーぜー言いながら追いかけた。

「あ、市原さーん! 秋丸さーん!」
「遅い、大地!」

ううん、大地って呼んでくれるって幸せすぎる、と大地が立ち止まって何か間違った幸せをかみしめてる間に、榛名が追い付いた。
ぎろ、と市原をにらみつける。

「てめ! 連絡ちゃんとしろよ! 俺たちどんだけ待ったと思ってんだよ!」
「五分くらいでしょ、待ち合わせ時間から連絡が行くまで」

大きなキャリーの上に腰かけた市原と、つーん、とそっぽを向いた市原につかみかからんばかりの榛名との間にはいったのは、秋丸だった。
ぐ、と唇をかみしめて、少し視線を横に流して正面から秋丸を見ないようにして、榛名は両手をポケットに突っ込んだ。
くそ。くそ。くそ。
可愛いじゃねーか。

「…うっす」
「おはよう。迎えありがとう。荷物持ってね」
「は!? 預けろよそんなもん!」
「預けたら受け取らないといけないでしょ」
「!! 家に送れよ!」
「有料でしょ。君が今日の料金全部持つんでしょ。払ってくれるならいいよ」
「!!!! こんなバカ高いホテル泊る余裕があるなら、それくらい払え!」
「たまたまここで使える商品券をたくさんもらったから、泊っただけだし。そもそもアナタに関係ないでしょ、前日俺たちがどこに泊ろうと。そこまでは出せとか言わないんだから、感謝して欲しいです」

ぐううう。と榛名が唇をかむ。
そんな榛名を置いてきぼりにして、秋丸が市原を振りかえった。

「イッチャン、チェックアウト済んだ」
「わーい! あきまるさんきゅー! また来ような!」
「もちろん。今度はMラコスタにしようね」
「わーいわーい! で、また、ドナルドと朝ごはん食って写真撮ろうな!」
「今度はさ。朝食バイキング、最初から、Mッキーパンケーキを取っとこうね。なかなかないんだもん」
「でも秋丸と半分こしたからいい」
「もー。イッチャンにたくさん食べさせたいんだってば」
「で、今度お泊りするときは、おそろいのパジャマ買おうな!」
「そだねー。色違いでもいいね」
「ストーップ!!!!!!」

ほっといたらずっとここでキャッキャキャッキャと騒いでそうだ。てか、俺たちはなんだ。
榛名は延々続きそうな会話を遮り、大地を振りかえった。

「大地、荷物持て! オラ、行くぞ! これパスポート!」
「ああ、御苦労さま」
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