猫アリ Novel

□お風呂
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今、私の目の前には猫がいる。
ただの猫ではない。2本足で歩く猫、チェシャ猫。

そして私はチェシャ猫に向かって水を掛けている。
決して虐めなどではない。
水といってもゆるま湯といった方が正しい。
そう……私は今、チェシャ猫にシャワーを浴びせている。



1時間くらい前のこと。
私とチェシャ猫は部屋で寛いでいた。
私は今夏休み。部屋にエアコンを付けて読書をしていた。
エアコンなんて付けても大丈夫かな?って思ったけど、
チェシャ猫が「暑いのは嫌いだよ」と言っていたから、勝手に私の快適な温度設定にしている。

チェシャ猫は何をやっているのかというと……。
ひたすらじっとしている。動かない。
床の隅で丸まって……視線を感じるから私の方を見ているんだろうけど……。
気になる。
やっぱり暇なんだろうなぁ。

「ねぇ、チェシャ猫」

「なんだい、アリス?」

声を掛けるとすぐに返事をしてこちらに来た。

「おしゃべりしよう」



この時はこんなことになるなんて思いもしなかったんだけど……。
全ては私のちょっとした疑問から始まった。
そう考えると私が悪いのかも……。
ううん! あれは絶対チェシャ猫にも非があるよ!!




エアコン付けたのに汗かいちゃったとぼやくと、いつもの如く、
毛づくろいかい? と尋ねる声があり。
首を横に振りながらも、ふとした疑問。
今更ながら、チェシャ猫はお風呂をどうしているのか聞いてしまって。

「……オフロってなんだい?」

……猫だから舐めて済ますのかな?
でも人型だし、届かないところも……。
猫はお風呂嫌がるよね。
だけど……流石に、お風呂に入ったことがないと聞くと、近付くのに躊躇してしまう。
今更だけどね。

だから、勝手だとは思うけど「アリス」の権限を使って、
チェシャ猫と一緒にお風呂場に行ったんだ。
チェシャ猫はローブ脱ごうとしないし、
向こうの国でも水さんたちのところでもローブ姿だったのを思い出したから、
仕方ないかと妥協してローブのままお風呂へ……。
と思ったけど。そんなに甘くはいかなくて。

「話さない水は嫌いだよ」

……もー!!
なんだか腹が立ったから、座らせてシャワーにすることに。
嫌がってたけど、「嫌ならお風呂」って言葉で少しだけ大人しくなった。
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