妖精の扉

□茶断ち
2ページ/3ページ

「ねぇ弥彦、剣心見なかった?」

「んあ? お前がまた重たい買い物でも頼んだんじゃねぇの?」

「失礼ね!自分で頼んでおいて忘れるなんて事あるはずがないじゃない!」

「お前なら考えられる!」

「なんですってー!シメてやる!」












拙者はひたすら薫殿と顔を合わさないよう努めた。


そう…それもこれも…











「なんなのー!剣心ったら稽古中に昼餉の用意はしてくれて、食べる時にはいなくなるなんてー!」


「俺食ったら赤べこ行くわ。」









夕餉の時もなんとか避ける事が出来た。

後は寝るだけ…薫殿が湯浴みに行ってる間に自室に向かった。


スーッ



「っ!薫殿!」

湯浴みに行ったはずの薫殿が拙者の部屋の真ん中で座り込んでいた。






「どういうつもり!?」


「あいや…」


目を潤ませて睨んでいる薫殿を見ていると申し訳なく思うのだが、ここはぐっと我慢。

「剣心、私を避けてない?」


「…薫殿は…何を望んでいるのでござる?」

「へっ?」


「茶断ちをしているのでござろう?」


「っ…うぅ……妙さんったら…」

「願いは叶えられそうでござるか?」



薫殿は溜め息を吐くと首を横に振る。

「拙者も茶断ちというものを試みたのでござるよ。」

「えっ…剣心にも望む事があるのね。」

さも嬉しそうにこちらを見詰める薫殿。


「…剣心は…何を絶っていたの?」


「拙者の願いと絶つものが同じで困ったでござるよ。」

「?」


「薫殿…拙者は今日一日薫殿の笑顔を絶っていたでござる。」

「え////」


頬を染める薫殿を腕に閉じ込める。


「だから…拙者の願いは茶断ちでは叶わぬのでござるよ?」


強く強く抱きしめる。


「剣…心////」



薫殿の柔らかい香りが胸一杯に広がる。

薫殿の絶っていたものが拙者ではなく甘い物だった事に拗ねた自分が、今考えると恥ずかしい。

それをも閉じ込めるようにギュッと抱きしめる。





「やっぱり茶断ちって効くのね…私の願い…今…叶ったわ////」



「え…」







end
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ