妖精の扉
□茶断ち
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最近薫殿の様子がおかしい。
食欲がないというか…
かと言って一日三度の飯は普通に食べる。
おかしいのは…
「薫、これ食わないんだったら俺が貰うぜ?」
「…ん…どっどうぞ」
「薫殿…口が開いているでござるよ」
「はっ気のせい気のせいさてと!縫いかけの着物があるんだった」
好物の饅頭を目の前にして…しかも決して食べたくない訳では…いやかなり食べたそうであるのにも関わらず…
「さては…」
薫殿の行動に異変がある時、必ずと言っていい程関与している御仁が居る。
皆もお分かりであろう。
そう…
「茶断ちでござるか…」
「この前来てはった若いお客はんが話してはって…薫ちゃんも叶えたい事があるんやねー。でも一体なんやろ…剣心はんとはええ仲になったんやろ?…剣心はん、他に思い当たる事はおまへんの?」
「いや…」
他に思い当たる事…で否定した訳じゃなく、いい仲という所で引っ掛かった。
そう…まだ想いを伝えていない。
決して自惚れている訳ではないが…いや…もしかしたら自惚れなのかもしれない…が…
薫殿が拙者の言葉に『茶断ち』で願掛けしているのであれば、早々にも伝えた方がよい気もする。
辛そうな薫殿を見てはおれない。
拙者なら『茶断ち』なんて出来るであろうか?
何を望んで何を絶つだろう…
頭に思い浮かんだのは…
「!」
ややこしいでござる。
こういう時はどうするでござるか?
考えてみれば…
何故薫殿は拙者みたいに悩まないのか…
悔しいでござる!
少し薫殿に意地悪をさせていただくでござるかな…
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