妖精の扉

□いつか歪む日の僕へ
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あぁ、僕らのアリス。

君は覚えているの?

もう忘れてしまったかなぁ?


今から思えば、もうずっと昔。


空がまだ、薄い水色に満ちていて

赤い滴が水溜まり程だった、あの頃を。




―――「ウサギさんっウサギさんっ」


君はいつも、嬉しそうに笑ってたね。

まるで僕らに会えるのが嬉しいみたいに。



「どうしたの、僕らのアリス?」


そう聞けば君は、やっぱり笑って。



ウサギさんにあいにきたのよ、と

舌っ足らずに笑うんだ。



僕はそれが嬉しくて


幼い君が愛しくて



精一杯の想いを込めて

「ありがとう」


いつだってそう言ったんだ。



アリス、僕は君の幸せだけを願っているんだよ。



例え、猫に疎まれても



例え、ビルに諭されても。



だってそうだろう?


僕らの幸せは、君が笑ってくれることなんだから。



だからアリス、選ぶんだ。



君が望む未来を、


君自身の幸せを。



―――「雪乃、どうかしたの?」



僕が歪んでしまっても


あぁ、どうか、頼むから



「何でもないよ。―――亜莉子」



いつか歪む日の僕よ

僕らのアリスから


選択肢を奪うことだけはしないで



(見守ることが、君の意義だと)

(どうか気付いて、手遅れになる前に)



君 が アリス を 殺 して しまう 前 に
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