<逃亡2〜ある夜>
夜中にふと目が覚めた。
薄いカーテン越しに外からぼんやりした明かりが入ってくる。
月が出たのだろう。
木々を震わして高く低く風がうなっている。
隣に寝てるクラウドから人肌の温かみが伝わってくる。
頭をめぐらすと薄闇に白くクラウドの髪が浮かび上がる。
なんとなく顔をよせてみた。
甘い枯草のような匂いがする。
良く寝てるのを確かめてそっと髪をまさぐる。
今日は久しぶりに風呂に入ったせいか、かつてのつやつやした手触りが蘇っている。
婆さんにああは言ったものの、クラウドが夜中に暴れることなんて滅多にない。
いままでに一度あっただけだ。
なんだかクラウドと別の部屋で寝るのが耐えがたかったのだ。
いつも一緒にいないと不安だったし、自分の手の届くところにいないと気も狂わんばかりに心配になる。
クラウドがほとんど話せないのがとても淋しい。
少しためらって、すねたように話す独特の喋り方。
感情表現が下手で、無愛想に見えてしまうが、表情の端々にふと現れる繊細な影。
クラウドの表情や言葉に隠された沢山の意味がわかるようになると、この不器用な意地っ張りの少年がたまらなく愛しくなる。
半身を起こしてクラウドの顔を覗きこむ。
淡い月明かりの中、人形のような白い顔がほんのり見える。
瞳は閉ざされており、軽く眉間を寄せている。苦しい夢でも見てるんだろうか?
半開きの唇から白い歯がわずかに見える。
「クラウド・・・」そっとつぶやいてみた。
もちろん反応はない。
ためらいながらゆっくり頬を撫でる。
急に泣きたい気持ちになった。胸の中に固まりのようなものがあって、呼吸が出来ない。
切なくちぎれんばかりの哀しさと愛しさが湧き上がってくる。
「お前が元に戻るためなら何でもする・・・」
顔を首筋に寄せると、生気が渦巻いてるように暖かい。
クラウドの肌の匂いがする。
ゆっくり胸元をまさぐる。肌はわずかに湿り気を帯び、手になじむ。
(綺麗な肌だ。)
魔光中毒になってから、ますます肌が肌理細かくなったような気がする。
(声が聞きたい、オレの名前を呼んでくれ・・・)
頬から喉元、胸へと触っていても反応は全くない。
もう少し刺激を与えてみようか?
小さな乳首をそっと指先で触ってみた。
(これくらいはいいよな。)
ゆっくり円を描くように愛撫すると心なしか乳首が固くなってるような気がする。
(リハビリだ。)そんなリハあるもんか、と心の片隅で囁く声がするが、別の暗い隅から立ち上がってきた思いが膨れ上がってきて押しつぶす。
(少し反応してる。)自分の問いかけに答えてくれた気がして少し嬉しくなった。
(もう少し。)今度は乳首を口に含み、舌を平たくして舐め上げる。
クラウドの体がぴくんと動いた。
(やった!反応したよ。)
片方の乳首を口に含んだまま、唾液をつけた指でもう一方の乳首をゆっくり撫でさする。
「あ・あ・・」クラウドが小さい声をあげた。
(クラウド!!!)
声だ!!呼びかけにこたえたのか?
ザックスは思わず両手をクラウドの背中に廻すとすべらかな体を固く抱きしめた。
(クラウド、クラウド!!!オレは・・オレは淋しい、淋しい、淋しい・・・)
背中に廻した右手をそのままに、左手でゆっくり髪を撫でる。半身を起こされたクラウドはくったりと体を反らせる。
頬ずりをすると微かに首を振る。
気づいたら泣いていた。
涙は静かにとめどなく流れ、クラウドの頬を濡らし自分の唇にも流れ込む。
(月のせいだ。月が悪いんだ・・・)
冷たい月明かりに照らされて、ザックスは腕の中の暖かい体を抱きしめて眠りについた。
風がやんだのか、自分たちの息以外何も聞こえぬ夜は重くしめやかに過ぎていく。
戻る
**********
こちらはザックラ専用拍手です。
皆様のご意見お待ちしてます!!
入り口
血と硝煙と泥と(前編)
血と硝煙と泥と(後編)
血と硝煙と泥と〜エピソード